DSF2017の会場で“ビブリオバトル(知的書評合戦)”を開催

~技術だけじゃない。ビジネス・スキルやメンタルの強化で開発効率向上へ~

2017年10月13日に開催されるDesign Solution Forum 2017(DSF2017)では、初の試みとして、組み込み/半導体系の開発技術者によるビブリオバトル『エンジニアがエンジニアに贈る本 ~この1冊で世界観が変わる!~』を実施します。ビブリオバトルは、複数の発表参加者がそれぞれの推薦書籍を紹介し、聴講者の投票によって“チャンプ本”を決めるバトル形式の書評会です。本企画の発表に先立ち、DSF2017実行委員会 J1チーム(中堅技術者中心の企画ワーキング・グループ)は5月19日にビブリオバトルの模擬戦を行いました。ここでは、その模擬戦の様子を紹介します。なお実行委員会は、本企画の発表参加者を募集中です。募集要項は稿末に示します。

ビブリオバトルは、京都大学 情報学研究科の研究員だった谷口 忠大氏(現 立命館大学情報理工学部 知能情報学科 准教授)が、研究室の輪読会で使用する課題図書を探す際に、参加メンバが持ち寄った書籍を紹介し合い、みんなが一番「読んでみたい」と思った本を選んだことが始まりだったそうです。今では大学のほか、大型書店や公共図書館が催すイベント、企業内研修、小・中・高校でも実施されています。詳細は、公式サイトを参照してください。

図1 ビブリオバトル公式サイト
 

DSF2017では、エンジニアが推薦する、一番「エンジニアのためになる1冊」を選びます。取り上げる書籍は、文芸書、ビジネス書、技術専門書など、なんでもかまいません。
DSF2017でビブリオバトルを聴講する利点は、大きく二つあると考えられます。一つは、DSF2017という、特定領域に興味を持つコミュニティにとっての“良書”を見つけられることです。検索エンジンやAmazonの書評欄では見つけにくい、企業エンジニアのツボを突く、隠れた名著が見つかる可能性があります。
もう一つの利点は、マネージャの視点で、企業内研修ツールとしてのビブリオバトルを実体験できることです。ビブリオバトルは、若手技術者のプレゼン能力や論理的思考力、自己啓発に対する意識の向上に役立ちます。彼/彼女がどのような本を読み、それをどう評価しているかを知ることは、その人の“人となり”を知ることにつながります。
次に、5月19日の模擬戦の様子を紹介します。

図2 模擬戦の様子
 

模擬戦の発表参加者は5名で、11名の投票によりチャンプ本を決定しました。

図3 紹介された書籍と発表参加者
 

最初に司会者がルールや進行方法を説明しました。続いて、発表参加者が順番に、書籍紹介と質疑応答を行いました。発表中はカウント・ダウン・タイマが残り時間を刻んでおり、発表参加者だけでなく、観戦者にも緊張感が伝わるようになっていました。

各発表の概要を、以下に示します。

1.『モモ』 (発表者:守田 直也氏)
この作品をあらためて読み返して感じたのは、自分が後輩を指導する立場になったとき、あれやこれやと細かく指示するのではなく、課題を与えてそれに対して回答が来るのをじっと“待つ”ことも重要だということ。業務の中では、性能や効率を追い求めているが、そのスペックは本当にユーザが求めているものなのか、を見直すきっかけを与えてくれた。

図4 守田 直也氏

2.『「分かりやすい表現」の技術』 (発表者:橳島 正起氏)
私が書いた資料や説明文によって一部の人に誤解を与えた経験があり、こうしたトラブルを減らしたいと思って読んだ。書いてある内容は当たり前と感じるものが多いが、日々の仕事の中では忘れがちなものばかり。グサッときた言葉は「分からないのはおまえが悪い。ちゃんと書いてあるじゃないか」。このフレーズを反面教師として仕事に取り組みたい。

図5 橳島 正起氏

3.『ニワトリを殺すな』 (発表者:宮原 典史氏)
「ある商品を開発しているときに、技術的に難しい課題、解決が困難な課題に直面することが必ずある。だけど、絶対にそれを自分たちの都合のいいように解釈して解決してはいけない」というせりふがある。私も、スケジュールによっては、自分に都合のいいように解釈してしまうことがあったが、それをすると消費者に迷惑をかける、という基本的なことに気づかせてくれる。これを読めば、翌日からの仕事に対する姿勢は必ず変わる。

図6 宮原 典史氏

4.『本当に頭がいい子の育て方』 (発表者:平木 哲夫氏)
本当に頭のいい子を育てる七つの力が紹介されている。これらの力は、自分が仕事をする上で、常々、自分に足りないと考えていたもの。印象に残ったのは「親子力」。昔の会社には、上司と部下の間に「親子力」があり、「見守って、育てて…」という側面があった。これが、最近は難しくなっている。自分が部下を持つようになったとき、「親子力」のある上司になりたいと思った。

5.『プロフェッショナルの条件』 (発表者:矢野 哲夫氏)
この本を読み始めたころ、自身がリーダーとして苦労している時期だった。チームのメンバに、自分の考えをうまく伝えることが出来ていなかった。さらに私自身、自分の弱みをコンプレックスに感じて悩むタイプの人間だった。この本を読むことで、こうした悩みを緩和できた。仕事に向き合う姿勢や行動が変わり、仕事が楽になった。

図8 矢野 哲夫氏

投票の結果、『モモ』、『「分かりやすい表現」の技術』、『プロフェッショナルの条件』の3冊が最大得票(同数)を獲得しました。ただし今回は模擬戦ということで決選投票は行わず、3冊をチャンプ本としました。所要時間は50分でした。
DSF2017実行委員会は、本番のバトルの発表参加者を募集しています。「意外性のある書籍ほど、おもしろい発表になります。(模擬戦で守田氏が紹介した)『モモ』は児童文学ですが、技術者が手にとると別の“気づき”があります。本のジャンルに縛りはありません。ぜひ、お気に入りの1冊を持ってきてください」(DSF2017実行委員会 J1チーム ビブリオバトル企画リーダーの高見 亮氏)。

「ビブリオバトル in DSF」発表参加者公募のご案内

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