DSFインタビュー ブログ「FPGA開発日記」著者 msyksphinz 氏

誰もが触れられるオープンソース、それがRISC-Vの最大の魅力

電子システムの開発業務を支えるキーパーソンに、技術や製品開発の動向などについて話をうかがうインタビューの第4弾。今回は、DSF2017にてRISC-V関連の講演を予定している、ブログ「FPGA開発日記」の著者 msyksphinz氏(ハンドルネーム)に話を聞いた。※msyksphinz氏の正体はDSF2017のセッションを聴講すれば確認できる。

         msyksphinz氏のアイコン

RISC-Vは世界的に注目を集めているオープンソースの命令セットアーキテクチャ。ARMの独壇場と言える今日の組み込みプロセッサ市場において、オープンソースという旗を掲げて新たなエコシステムを作り出そうとしているRISC-V。その魅力はどこにあり、今後どう発展していくのだろうか。聞き手はDSF2017実行委員の河邉 恭 氏。

RISC-Vとは?

河邉:DSF2017の講演でもお聞きできるかと思いますが、まずRISC-Vとはどんなものか?簡単に概要を教えて下さい。

msyksphinz:RISC-Vは今までの命令セット・アーキテクチャとは違う新しいアーキテクチャで、オープンソースなので世界中の誰もが触る事ができます。個人的な見方をすると、古いものに引きずられすに新しく作られたアーキテクチャと言えると思います。例えば「アウトオブオーダー」を実装し易い仕様だったりしますね。

河邉:なるほど、新世代のアーキテクチャという事ですね。msykさんがRISC-Vに興味を持たれたきっかけは何ですか?

msyksphinz:元々CPUを開発する仕事をしていたので数年前から見ていましたが、とにかくオープンで情報が何でも手に入るんですね。開発者向けのメーリングリストがあるのですが、RISC-Vのバージョン1.0がリリースされる前からメーリングリストでかなり活発な議論が交わされていました。それを見ていて「自分もRISC-Vの仕様策定に関われるかも!それは面白い!」という感じで。(笑)その後、ARMがSoftbankに買収されたのをきっかけに、より真剣にRISC-Vに取り組むようになりました。もしかしたらARMが使えなくなるかもしれないという危機感からです。

FPGA開発日記 msyksphinz氏(手前右)河邉 恭 氏(左手奥、聞き手)Design Solution Forum実行委員

RISC-Vの今後

河邉:RISC-Vは現在どのような状況なのでしょうか?

msyksphinz:現在バージョン2.0が公開されていて、仕様的にはほぼ固まっていると言えます。ご存知かと思いますが、GoogleやNVIDIAなど名だたるIT企業がRISC-V Foundationに参画し活発に活動していて、既にRISC-VベースのプロセッサをASIC化する会社も出始めています。

河邉:RISC-Vはこれから更に普及していくのでしょうか?

msyksphinz:まず大学などの教育分野では確実に拡がっていくでしょう。これまでMIPSベースだったコンピュータ・アーキテクチャの教科書「ヘネパタ」も次の第6版はRISC-Vで全面刷新されるようです。ただ、ビジネスの世界でどうなるかは未知数で、向かう方向によっては無くなる危険もあると思います。x86やARMとの直接対決は難しいのではないでしょうか?

河邉:RISC-Vを適用しやすい分野はあるのでしょうか?

msyksphinz:分野は様々考えられるでしょう。最近はプロセッサそのものに大きな価値はなく、勝負するのはアクセラレータやプラットフォームであったりするので、プロセッサはRISC-Vでいいという考え方もありだと思います。あと、少量生産の製品開発などに向いている気がします。チップ開発にあまりお金をかけれない中小企業などは、RISC-Vを使えばコスト削減、TAT短縮が実現できると思います。使い方としてはSoCの中のサブCPUやハード部の置き換えなどが適していると思います。

河邉:RISC-Vは使い方次第で色々と可能性があるという事ですね。

msyksphinz:はい。やはり何と言ってもオープンソースなので、誰でも触れる、動かせる。とにかく手を出しやすいというのがRISC-Vの最大の強みであり、最大の魅力ではないかと思います。

河邉:セミナーDSF2017ではどのようなお話をして頂けるのでしょうか?

msyksphinz:RISC-Vの背景、歴史、特徴などをざっくりご説明させて頂いた上で幾つかのユースケースをご紹介する予定です。また個人的にRISC-Vを触ってみた感じも少しお話できればなと思います。

河邉:DSF2017の講演とても楽しみにしております。どうもありがとうございました。

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